相続人の一人が被相続人の生前中に保有していた預金等をおろし自己の為に使ったものを不当利得として回収した事例 【弁護士 後藤】

相談内容

 Aさんのお母さん(Xさん)は,都内の土地(駐車場)を遺して亡くなりましたが,Xさんと同居していたAさんの弟Bさんは,Xさんが亡くなってからも遺産分割に応じないうえ,駐車場の賃料も独り占めしてます。また,Bさんは,Xの生前中,Xさん名義の預金を勝手に引き出しては自分の経営する店の資金に充てるなどしていたので,そうした分もきちんと分割してもらいたいと相談に来られました。

解決内容

 Aさんのお父さんはXさんより先に亡くなっておられましたが,そのときのABXさんらの遺産分割協議ではお父さんの遺産の大部分はBさんが取得するかわり,Xさんが亡くなられたときには駐車場はAさんが取得するという約束をしていました(但し,駐車場の件は書面なし。)。

 Aさんは,Xさんとの間でX死亡の際に駐車場を贈与する契約があったこと,BさんがXさんの預金をおろして使ったことは不当利得にあたるとしてAさんの法定相続分の割合に基づく金額の返還を求めて提訴しました。

 いずれもAさんの主張を証明する直接的な証拠が乏しい事案でしたが,駐車場はAさんが取得すること,預金についてもAさんが請求した金額の約50%をBさんが支払うとする和解が成立して解決しました。

コメント


第一東京弁護士会
後 藤  寛
ゴトウ ヒロシ
Goto Hiroshi
相続人の1人が,被相続人の預金等を生前に引き出して使っていたという主張は相続事案でしばしばありますが,その親族が被相続人と同居していた場合,その相続人が下ろして自分のために使ったことを証明することは必ずしも容易ではありません。本件では,Aさんからの相談後,Aさんと弁護士とが一緒にXさんの口座がある金融機関に出向き,取引履歴をとるなど証拠収集をしたうえで提訴しました。訴訟では比較的多額の引き出しについてBさんに釈明を求め,合理的な説明ができなかったものはBさんが使ったことを前提とした和解をすることができました。