弁護士業務と税金 【弁護士 山添 健之】

 私たち弁護士がお客様のご依頼を受けて様々な業務を行うにあたって、税金が問題となることが多々あります。当事務所で一番多いのは、遺産分割などの相続事件を処理する際の相続税の問題です。相続税の申告が必要と考えられるお客様には、当事務所と協力関係にある税理士法人をご紹介し、税理士との打合せに同席するなどして、適切に申告・納税ができるようにサポートをさせて頂いております。

 相続にあたって相続税が発生することがあるのはどなたにもわかりやすいことですが、離婚にあたっても税金が発生することがあります。離婚の際に、婚姻生活中に形成した財産をわけることを「財産分与」といいます。「財産分与」として、例えば、夫が、妻に、時価1億円の土地・建物を譲ったとします。この時、場合によっては多額の税金を納めなければならないことがあります。それも、1億円の土地・建物をもらった妻ではなく、それをあげた夫が払わなければならないことがあるのです。これは「譲渡所得税」という税金で、典型的には、不動産などの財産を売ってお金にした時に、自分がその財産を手にしたときと比較して値上がりした分に、税金がかかるものです。

 では、なぜ、1億円の不動産を妻に譲った夫にこの「譲渡所得税」がかかるのか。夫は1億円の不動産を妻に譲ることで、1億円の債務(財産分与義務)を免れることとなり、これは1億円の不動産を売って現金にし(この場合は間違いなく譲渡所属税がかかります)、妻に現金1億円を渡したとの同じだから、と考えられています。なお、夫がもともと自分名義でもっていた現金を妻に財産分与として渡したのであれば、譲渡所得税はかかりません。

 さて、当事務所で比較的取扱の多い、借地の事件でも、税金が問題となることがあります。借地を譲渡したときに先ほど説明した「譲渡所得税」がかかる(値上がりしていた場合)のは当然ですが、固定資産税・都市計画税が問題となることもあります。土地の賃借人(地主)は、土地の固定資産税・都市計画税を負担する必要があり、地代の算定にも、土地の固定資産税・都市計画税が用いられることがあります。

 借地人が、借地上に家を建てて住んでいたところ、あるときからそこを自宅兼事務所として使いはじめ、1階に看板をだしたとします。地主としては、建物に変更がない以上、なにも言わずにいることが多いのではないでしょうか。しかし、建物の使用目的が変わることにより、建物ではなく、土地の固定資産税・都市計画税が大幅に上昇することがあります。これは、土地の固定資産税・都市計画税は、住宅用地として用いられている場合、大幅に軽減される制度があり、建物自体が変わらなくても、その「住宅」ではなくなることにより、この軽減が適用されなくなり、固定資産税・都市計画税が大幅に上昇することとなるのです。

 このように、弁護士業務と税金は密接に関連しており、私たちも、必要に応じて税理士と意見交換しながら、お客様が思わぬ負担を被ることのないよう、細心の注意を払っています。