成年後見制度について 【弁護士 清水 千晶】

 成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2つからなり、法定後見制度は「民法の一部を改正する法律」により、任意後見制度は民法の特別法である「任意後見契約による法律」により創設されました。2000年4月から施行され、現在は、広く知られる制度となりました。

 ただ、成年後見関係事件の申立件数は、ここ数年、新規利用件数約3万5000件程度と伸び悩み、認知症高齢者が460万人を超えると言われる中、非常に少ないと言わざる得ません。

 

 私もこの17年間で、任意後見契約のお手伝いした案件は、甥姪が将来、伯父(叔父)伯母(叔母)等の後見人となる場合がほとんどでした。子が将来、親の後見人となる任意後見契約を積極的に勧めた例はありません。「不動産の売却などの必要な場面に限定」して利用することができず、ずっと家裁や後見監督人の監督がつくことになり、使い勝手が悪いと思っていたからです。

 

  夫に後見制度を利用した結果、夫の財産を使えなくなって困っているという妻の相談を受けたこともあります。「古くなって借り手が少なくなった夫名義の賃貸アパートを夫名義の預金を使って建て替えたい。そうして賃借人を入居させていかないと自分(相談者)の将来が不安なのだけれど、それが難しくなってしまった」という相談でした。

 また、父親に後見人がついた結果、後見人が毎月決まった金額しか自分に渡してくれなくなった、現在、病院から精密検査が必要だと言われているが、その費用が捻出できず困っているという中年男性の相談を受けたこともあります。ずっと父親の収入、年金で生活してきた方でした。

 被後見人の財産を守るという後見制度の目的からすると当然のことなのですが、夫も妻の為にアパートを建て直してあげたいだろうな、父親は子の為なら高い検査代を支払うだろうな、と思った覚えがあります。

 

 2016年に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行され、内閣府には「促進委員会」も設置されました。委員会では「本人が必要な支援を、必要な期間、必要な場面に限定して利用できるよう、制度を改善すべきとの指摘もされました。「必要な期間、必要な場面に限定しての利用」が可能となれば、任意後見制度の利用は飛躍的に伸びることと思います。