離婚をめぐる相談時に、「父親は親権者にはなれないのでしょうか」「父親は親権を争っても不利でしょうか」、と心配をした様子で相談をうけることがあります。
たしかに、裁判例では、乳幼児にとって「母親の存在の重要性は疑いのないもの」、母の愛情と監護が重要、などとして、父親のもとで安定的に育ってきた場合でも母親への親権変更を認めているものがあります。
実際に、父親側の代理人として審判で争うときも、相手方の書面で、母親が必要とされている時期であるから、母親が優先されるべきで、「母性優先の原則」が適用されるべき、などと主張されることも多くあります。
しかし、固定的な男女の役割観に合理性はないため、それを前提とする議論が子どもの成長発達にとってどれほどの意味があるのだろうかと思います。
子の監護に関する処分においては、子の利益が最優先されるべき(民法766条1項)ですので、生物学的に、「母親」か「父親」かではなく、子どもとの関係性・情緒的な結びつき等を踏まえ子どもの成長発達に資するのはどちらのもとでの監護なのかを考えることが重要だと思っています。
そのような観点から、父親のもとで監護されている乳幼児について、父親のもとで安心して生活し、精神的にも安定して育っていること等を主張立証して、引き続き父親のもとでの生活を継続させることが相当との裁判所の判断を得た事案がありました。
「父親だから」「母親だから」ではなく、子どもの最善の利益、子どもの成長発達の観点からお手伝いができればと思っています。