子どもの貧困 【弁護士 仲里 歌織】

 2013年に厚労省が発表したデータによると、子どもの相対的貧困率は、16.3%。

 数字にして、6人に1人、日本全体では約325万人の子どもたちが貧困状況にあることになります。

 2013年12月にユニセフが「先進国における子どもの幸福度」という報告書を発表し、その中で子どもの相対的貧困率が取り上げられていますが、先進国31ヶ国中22位という位置づけで、先進国の中でも日本の状況が悪いことが分かります。

 

 貧困の連鎖を断ち切るため、心ある方々がボランティアで子ども向けの勉強会を実施しているところが全国的にいくつかあります。少し前に見学させてもらったところでは、生活に困難を抱えている家庭が多く、学習以前の問題を抱えている子どもをどう支えていくかということを真剣に考え、食事の提供等もあわせて行っていました。

 こういった活動に頭の下がる思いを抱くとともに、年々上昇する貧困率や学校現場の話を伺うと、とても心あるボランティアの力だけではどうすることもできないほど、子どもたちは深刻な状況に置かれているのだと感じます。

 

 こういった状況を受け、2013年6月、子どもの貧困対策推進法が成立しました。子どもの将来が生まれ育った環境に左右されることのないよう、子どもの貧困を減らすための対策を、国や自治体に義務づける内容の法律です。

 「見えづらい」と言われてきた「子どもの貧困」を正面から取り上げる契機となる重要な法律ですが、貧困率削減の数値目標が盛り込まれていない等大きな問題点が存在します。

 既に2014年8月、この法律に基づき、政府が「大綱」を定め、現在、都道府県が大綱を勘案して「子どもの貧困対策計画」の策定に取り掛かっていますが、政府の「大綱」については、既存施策の寄せ集めであるといった指摘もあるように、全力で取り組もうとしているのか、疑問を感じます。

 今回の「大綱」では、財源の見通しが立たないこと等を理由に、大学進学のための給付型奨学金の創設が盛り込まれませんでしたが、他方で防衛費の増額を見ていると、本当に財源の見通しが立たないのかと疑問を持たざるを得ません。

 貧困を減らすため、貧困の連鎖を断ち切るため、きっちり財源を確保し、給付型奨学金の創設を含め、本気で取り組まなければならない時期にきていることは明らかです。

 法の理念を損なうことのないよう、大綱に数値目標を盛り込み、財源を確保し、抜本的な取り組みをするのが、政府の責任だと思います。微力ながら、この問題にも声をあげていきたいと思います。