イレッサ薬害訴訟

2005/11/10 弁護士 西田 穣
 
 
 

1 イレッサとは

 イレッサとは、イギリスに本社を置く世界的な大企業アストラゼネカ社が開発した肺がん治療薬です。イレッサは、「副作用の少ない画期的な夢の新薬」として大々的に喧伝され、2002年7月に承認申請後6か月という異例のスピードで世界に先駆けて日本で輸入承認されました。

 

2 イレッサ被害の拡大

 しかし、「夢の新薬」とされたイレッサは、2002年7月の販売開始後、約2年半で588人もの副作用死亡者を生み出しました(2004年12月28日現在)。

 

 

他方、2004年12月17日、FDA(米国食品医薬品局)はイレッサには延命効果はないという試験結果を受けて、市場からイレッサを回収するか、他に妥当な規制措置を採るかを決定する予定である旨を発表しました。また、英国アストラゼネカ社は欧州でのイレッサの承認申請を取り下げました。イレッサは、安全性を欠く商品ということに加え、薬としての有用性自体も疑われる商品であることが明らかになったのです。
 

3 本訴訟の意義

 本訴訟は、このイレッサにより副作用を発症した患者及びその遺族が、被害の救済を求めて起こした損害賠償請求訴訟です。本訴訟では、イレッサが欠陥商品であることは当然のことながら、その宣伝・広告のあり方そして医薬品の承認申請制度の欠陥を問うものです。
 イレッサの服用に至った患者は、余命幾ばくかを宣言された肺がん患者でした。肺がんという重病に直面しつつ、残りの命を少しでも延ばしたいと考え、わずかばかりの期待をもって服用した「薬」がイレッサだったのです。
 もし、イレッサが存在しなくとも、患者はいずれ死を迎えたのかもしれません。しかし、イレッサがなければ、イレッサを服用したことによる突然の間質性肺炎等の急性肺障害(呼吸障害などを引き起こします)に苦しまされたりすることなく、また、わずかな期間であっても残される遺族との交流を全うできたはずでした。
 また、遺族にとっても、亡くなった患者はその人らしいと言える最期を全うさせるよう自分なりにできることを十分にやったと言えることが、愛する者を失った悲嘆から回復させるための重要な要素であるところですが、それをまさか自分がよかれと思って服用を勧めた「薬」によって奪われてしまったのです。
 この苦しみ・悲しみは、肺がん患者であろうと健常者であろうと全く変わりません。たとえ余命幾ばくかの肺がん患者であっても、健常者同様の「命の重さ」がある、これが本訴訟で最も問いたいところなのです。
 ご支援、よろしくお願い致します。