マンションの滞納管理費等の回収 【弁護士 坂本 隆浩】

<はじめに>

 マンションの管理費・修繕積立金は,マンションを維持管理するために必要な費用ですので,この滞納があるとほかのマンション居住者にとって大きな問題にもなります。特に,戸数の少ないマンションでは死活問題にもなりかねません。

 その一方で管理費等の滞納で困っているというマンションが27.2%もあるという調査結果もあります。管理費等の滞納があってもそのままにされてしまう例が少なくないことを示しています。私が扱ったのも長期にわたって滞納していた事案でした。

 

<長期滞納を放置するとどうなる?>

 管理費等の滞納が長期になるのは,区分所有者が行方不明である,区分所有者が払うとは言うものの払ってこないなど様々な理由があると思います。いずれ払ってもらえるからと思ってそのままにしておくと,支払ってもらえるものも払ってもらえなくなります。つまり,管理費等の債権は5年で消滅時効にかかり,5年を過ぎた分を支払ってもらえなくなることもあります。したがって,管理組合理事長になった場合には,管理費等の滞納が何年になっているかを確認して,早急に何らかの対処をしなければならないのかを決めなければならなくなります。

 

<対処ってどうするの>

 管理費等の滞納が始まったら,文書で督促するなどが行われると思いますが,それでも支払いがない場合にどうするか。

 法的手続を取るしかありません。

 5年の消滅時効が近づいている場合には,支払督促などの訴訟提起,債務承認書を出してもらうなどが必要になります。

 管理費等の支払いを認めた判決が出されれば,それに基づいてマンション(区分所有権)を差し押さえ,競売代金から管理費等の支払いを受けることができます。滞納者の勤務先がわかっていれば,判決に基づいて給料を差し押さえることもできます。

 管理費等を支払えとの判決でなくとも,競売請求訴訟を起こすこともあります。抵当権がついていてオーバーローンであるなどの場合には競売請求訴訟が適切です。

 判決などがなくとも,いきなり強制執行としてマンションを差し押さえることもできます。管理費等では「共益費用の先取特権」と権利が認められるため,判決などがなくとも差し押さえることができるのです。

 マンションが売却された場合には,購入者も滞納管理費等の支払義務を負いますので,購入者に支払ってもらうことができます。

 

<注意点>

 以上いくつのかの方法を並べてみましたが,あくまで概略です。それぞれに要件効果が違います。特に,強制執行でマンションを競売して滞納管理費を回収しようとなると,実際に回収できない場合も出てきます(強制執行が認められない場合です)。したがって,どのような手段をとるかは慎重に判断しなければなりませんので,ぜひマンションに詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

 私が扱ったもので,訴訟提起後,区分所有者が認知症により施設に入っているのがわかったというものがありました。特別代理人制度を使って事なきを得ましたが,長期滞納という場合何があるかわかりませんので,弁護士に相談するのは不可欠と思います。