先日、友人と「ふなっしーって、時給274円らしいよ」と話をしていたところ、「それって、最低賃金違反じゃないの?」と言われました。
「ふなっしー」といえば、千葉県船橋市の名産品梨をモチーフにした船橋市゛非公認゛のゆるキャラとして、今や様々なイベントで引っ張りだこの超人気者ですが、そのふなっしーの時給は、ふなし(274)ということで、274円(という設定)だという話をしていたのです。
結論から言えば、本当にふなっしー(の中の人)の時給が274円だったとしても、最低賃金違反にはならないと思われます。
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者はその最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。最低賃金は、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があり、地域別最低賃金は、産業や職種に関係なく、原則として全国の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用され、各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。平成26年度の東京都でいえば、最低賃金(時間額)は全国で最も高く888円と設定されており、ふなっしーが住む千葉県は798円とされています。
また、特定最低賃金とは、特定の産業について設定されている最低賃金のことをいい、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合は、高い方の最低賃金額が適用されます。
最低賃金は、事業所の存在する地域の最低賃金が適用されます。本社が東京であっても、千葉県内にある事業所に労働者が所属していた場合は、千葉県の最低賃金が適用されます。また、派遣労働者の場合、派遣元の事業者の所在地に関わらず、派遣先の最低賃金が適用されることとなります。
仮に労働者、使用者双方の合意の上で、最低賃金より低い賃金を定めても、それは法律により無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなすことになります。また、使用者が最低賃金を支払っていない場合、地域別最低賃金違反の場合は、50万円以下の罰則、特定最低賃金違反の場合は、30万円以下の罰則がそれぞれ定められています。
ふなっしーの時給が274円だとすると、事業所がどこであろうと最低賃金を下回り最低賃金法に違反することになりそうです。
しかし、最低賃金が適用されるためには、何らかの労働契約に基づいた「労働者」である必要があります。労働者とは、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。一般的に会社員や、パートタイマー、アルバイトなどは、いずれもこの「労働者」にあたるため、最低賃金の対象者となります。
一方、ふなっしー(の中の人)は、おそらく誰かの指揮監督命令のもと活動しているわけではなく、個人の活動として営業を行っているものと思われます。念のため、ふなっしーのホームページをのぞいてみたところ、「個人でひっそりやっているキャラの為お返事がほとんど返せない状況が続いています」と記載してありました…。そうすると、誰からも指揮監督命令を受けず、「個人でひっそりやっている」ふなっしー(の中の人)は労働者には該当せず、仮に時給が274円だったとしても、最低賃金違反にはなりません。
なお、契約の形式が請負や委任となっていても、その形式によって直ちに労働者性が否定されるわけではなく、個別事情をもとに具体的に労働者性を判断することになります。労働者といえるかどうかは、仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由の有無や、会社による業務の具体的内容及び遂行方法に関する指示の有無などによって、判断していくことになります。
いずれにしろ、ふなっしーのような人気者が時給274円とは考えにくいので、そもそも最低賃金は問題にはならなさそうですが…。
全国の最低賃金は厚生労働省のホームページに掲載されていますので、自分の賃金が最低賃金以上かどうか気になる方は、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
以上