首都圏建設アスベスト第2陣訴訟始まる 【弁護士 鹿島 裕輔】

1 第2陣訴訟提訴

 平成26年5月15日、建設アスベスト被害者である原告ら合計115名が国と被告建材メーカーらに対し、損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提訴しました。

 平成24年12月5日、 東京地裁において、第1陣訴訟の「一部勝訴判決」を得ました。しかし、国は、原告らの国に対する賠償請求が認められたにもかかわらず、私たちが要求する石 綿被害者補償基金制度の創設とアスベスト被害防止のための施策確立という「政治的解決」をかたくなに拒み、東京高裁での控訴審で争っています。また、被告 建材メーカーらは、判決において、原告らの賠償請求が棄却されたことを理由に、加害企業に求められる「社会的責任」を果たすことを拒み続けています。

 このように、第1陣訴訟 において、原告らにとって満足のいく判決を得られなかったことが、上記の国及び被告建材メーカーらの不当な対応を招いたことは明らかです。そこで、私たち は、深刻な建設アスベスト被害が今日なお持続的に拡大しつつあり、この首都圏建設アスベスト訴訟が「全面解決」しない限り、今後とも建設アスベスト被害者 たちによる提訴が続くことを示すことで、国と被告建材メーカーらに対し、全原告に損害賠償支払いを命じる「全面勝訴判決」を得る決意のもと、第2陣を提訴 しました。

 

2 第1回口頭弁論期日

 平成26年9月12日10時30分から東京地方裁判所民事103号法廷にて、第2陣訴訟の第1回口頭弁論期日が開かれました。

 ⑴ 原告意見陳述

 当日は、3名の原告の方がそれぞれ意見陳述をされました。

 ある原告の方は、アスベストが原因で肺ガンになり、手術により右肺の3分の2を摘出した結果、息切れがひどくなり、他の人たちと同じ速度で歩くことができなくなりました。国や被告建材メーカーらに対し、元気だったころの自分の体を返してくださいと胸の内を述べました。

 また、ある遺族原告の方は、夫を返してほしい、せめて私たちのように辛い思いをする方々が現れないように、国と被告建材メーカーらの責任を明確に認めてほしい旨を述べました。

 さらに、ある遺族原告の方は、夫が亡くなってから、亡くなる直前まで夫が自分のことを気にかけていたことを知り、夫の後を追いたいくらいの気持ちになったと述べました。

 各原告共通して、裁判所に対し、建設アスベスト被害に関する国と被告建材メーカーらの責任を明確に認めてほしいと陳述されました。

 ⑵ 代理人意見陳述

 原告ら代理人5名による意見陳述が行われました。私も意見陳述を担当させていただきました。

 意見陳述は

①石綿関連疾患による被害と粉じん曝露実態

②被告国の責任について

③被告メーカーらの責任について

④弁護団団長による意見

⑤訴訟進行に関する意見

という形で行われました。

 

3 石綿関連疾患による被害と粉じん曝露実態

 私は、①石綿関連疾患による被害と粉じん曝露実態の意見陳述を担当しました。その内容について、簡単にご紹介いたします。

 ア 石綿関連疾患による被害

 まず、石綿関連疾患によ る被害についてですが、石綿肺、肺ガン、中皮腫などの石綿関連疾患による身体的被害に関し、被害患者の方の自宅での様子を収めたDVDの映像を法廷で流し ながら、その悲惨さ・深刻さを訴えました。そして、その患者を支える家族にも多大な負担がかかること、石綿関連疾患が治癒の見込みのない極めて重篤で、予 後の悪い病気であるため、患者は迫りくる死の恐怖に怯えて生きていかなければならないことを述べました。さらに、最も重い被害が死であって、本件訴訟の被 災者115名のうち57名、約半数もの方がすでに亡くなっていること、そして、石綿による死は、激しい痛みや呼吸困難に苦しみながら亡くなっていく、平穏 な死とは程遠い、悲惨なものであることを訴えました。

 イ 石綿関連疾患が建設業に集中した原因

 また、石綿関連疾患が建設業に集中したのは、日本は石綿を海外から大 量に輸入し、その輸入した石綿の7割以上が建築材料に使用されたことが原因であること、そして、かかる事態をもたらしたのは国と被告建材メーカーらの対応の大幅な遅れであったことを述べました。

 ウ 粉じん曝露実態

 さらに、粉じん曝露実態 として、吹付け作業や電動工具による切断作業 について、DVDによる映像を流し、各作業において大量の粉じんが発生していることを示しました。また、こ のような作業がシートや外壁に囲まれた屋内に類似する閉ざされた環境で行われたことで、現場には大量の石綿粉じんが発生・飛散、滞留していたことや、建設 作業従事者は、数百から数千に及ぶ建築現場を渡り歩くため、長期間・累積的に石綿粉じんに曝露したことなどを述べました。

 エ 以上の事情は、国と被告建材メーカーらの法的責任を判断する上で必要な前提事情でありますので、

  当該事情について意見陳述をさせていただきました。

 

4 今後の予定

⑴ 第2陣訴訟

 第2陣訴訟の今後の予定は以下のとおりです。

 (場所は全て東京地裁103号法廷)

 第2回口頭弁論期日:平成26年11月28日10時30分~

 第3回口頭弁論期日:平成27年1月23日10時30分~

 第4回口頭弁論期日:平成27年3月13日13時30分~

⑵ 第1陣訴訟

 第1陣訴訟(東京高裁控訴審)の今後の予定は以下のとおりです。

 (場所は全て東京高裁101号法廷)

 第5回口頭弁論期日:平成27年2月25日15時~

   

 以上の予定で各訴訟は行われていきますので、今後とも首都圏建設アスベスト訴訟へのご支援・ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。