非嫡出子(婚外子)相続分差別について 【弁護士 中村 悦子】

 既にニュースなどでご存知の方も多いかと思いますが,今年7月10日に,最高裁の大法廷で弁論が開かれました。争点は,非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1と定めた民法第900条4号の違憲性です。

最高裁が弁論を開く場合は,それまでの判断が見直される傾向が強いことから,今回もいよいよこの規定が憲法違反と判断されるのではないかと,期待が高まっています。

            

 結婚していない男女間に生まれた子(非嫡出子・婚外子)の相続分を,法律婚を経た夫婦の間の子(嫡出子)のそれと差別するこの規定は,古くは明治時代の旧民法の頃から設けられていたものです。その根底には,法律婚を重視し保護する考え方があるとされています。

 しかし,近年では,この規定に対する批判が国内外から高まりつつありました。「結婚」・「家族」の在り方に関する価値観の多様化や,自己に選択の余地のない事柄を理由に「子」(註:「幼いこども」という意味ではなく,「親」に対する「子」という意味です)が差別されるという理不尽さ等から,この規定は不合理な差別として憲法14条(法の下の平等)違反であると指摘されてきたのです。

 そして,この規定は過去にも何度も最高裁で争われてきましたが,これまでは,そのいずれもが,反対意見付きながらも「合憲」との判断に終わっていました。

 

 私は,個人的には事実婚に特に思い入れがある訳ではありません。結婚する時も,あまり深く考えずに法律婚を選びました。しかし,事実婚の知人たちも勿論いますし,そういう人たちの「家族」としての在り方と,自分たちのそれとに,何か質的な違いを感じたこともありません。ですから,『事実婚と法律婚のいずれがより優れているか』という議論をここで繰り広げるつもりはありませんが,国家に,「法律的に結婚して子供を産むという形こそが,正しい『家族』の在り方である」などと押しつけられるのには,強い違和感を覚えます。

 確かに,事実婚が増えることで,社会生活上,或いは戸籍等の実務上の諸手続が複雑化することは,あり得ることだと思います。しかし,そうした側面に対しては,個別の(法的な)対処を検討していくべきなのであって,事実婚から生まれた「子」を相続の面で差別するという現行法の一種報復的なやり方は,かなり旧時代的なものと感じます。

 

 人には,様々な事情や価値観があり,多様な家族の形がある。法律に携わる者として,そうした社会の多様性に即した,「どんな人にも生きやすい社会」を支える法律を望みたいと思います。

注目の最高裁の判断は,今秋にも示される予定です。