亀岡暴走事故の判決について考える 【弁護士 高木 一昌】

 少年が京都府亀岡市において軽自動車を居眠り運転で暴走させ集団登校中の列に突っ込み10名の死傷者を出した事件について、京都地裁は、2013年2月19日、少年に対して懲役5年以上8年以下の不定期刑を言い渡しました。まことに痛ましい事件であり、ご遺族の方には心より哀惜の意を表するものであります。

 少年に対しては、危険運転致死傷罪ではなく自動車運転過失致死傷罪が適用されたのですが、この点に違和感を覚える方が多いようです。

 少年は、無免許運転を繰り返した挙げ句に重大な事故を起こしたのですから、危険運転致死傷罪の類型の一つである未熟運転致死傷罪(刑法208条の2第1項後段)が成立する、と考えるのが一般人の素朴な感覚ではないでしょうか。

 しかしながら、京都府警と京都地検は、危険運転致死傷罪での起訴を断念し、より法定刑の軽い自動車運転過失致死傷罪で少年を起訴しました。その理由は、「日常的に事故を起こすことなく運転を繰り返していたので少年の運転技能は未熟とはいえない」という点にあるようです。無免許運転を繰り返すという悪質性は、危険運転致死傷罪の適用の可否とは別問題ということなんですね。私は弁護士なのでその辺の理屈は理解できるのですが、一般人の感覚からはかけ離れているだろうな、と感じております。

 ハンドル・アクセル・ブレーキの操作はできても交通ルールを全く知らない、という人が運転している自動車は、まさに走る凶器といえます。そうである以上、未熟運転致死傷罪の適否の基準となる「技能」の有無の判断には、交通法規の習熟度も加味すべきではないでしょうか。ただ、これはあくまで私見です。法曹界では、単に無免許であるだけでは「技能を有しない」には当たらないという見解が一般的ですので念のため。

 いずれにしろ悲惨な交通事故が少なくなるような世の中になって欲しいものです。